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住まいづくりワンポイントアドバイス

2023.06.20

高気密・高断熱、省エネ住宅の基準

省エネ住宅にするための高気密・高断熱は今や当たり前の時代となっています。地球規模の温暖化の問題も絡み、住宅の省エネ基準も何度も見直され今に至りますが、現在の最新の省エネ基準は2022年4月より「改正省エネ法」として施行されています。省エネ基準は素人には中々理解しにくい基準ですができるだけ簡単に解説します。

省エネ住宅の基準には「外皮性能基準」と「一次エネルギー消費量基準」の2点があります。「外皮性能」とは家全体を覆う屋根・壁・窓・床の省エネ性能(断熱)のことですが、断熱性能を数値化したものを「UA値(外皮平均熱貫流率)」といい、「地域区分」により定められた「UA値」の基準値以下の数値にすることで省エネを評価します。

次に「一次エネルギー消費量」ですが、基準水準として「BEI(Building Energy Index)」という指標を使います。「BEI」は実際に建てる建物の「設計一次エネルギー消費量」(住宅設備機器や給湯設備などの機器が消費するエネルギー)から、地域や建物条件などにより定められている「基準一次エネルギー消費量」で除した値であり、「一次エネルギー消費量基準」に適合となる数値は「1.0」以下、すなわち「BEI≦1.0」ならば省エネ基準を満たしていると評価します。

その他の省エネ基準を上回る基準は、省エネ基準を超え低炭素化に資する措置を講じている「低炭素建築物の認定基準」では「BEI≦0.8」、年間300戸以上供給する事業者に対してエネルギー消費量を抑えるための努力義務を定めている「トップランナー基準制度」では「BEI≦0.75」となっています。つまり、省エネ基準のグレードは「BEI」により示されますので、この「BEI」値を目安として省エネ性能を確認することができるのです。

「改正省エネ法」により2025年からは住宅を含むすべての建物について省エネ基準が義務化されます。また、2030年には義務化水準が「ZEH」基準レベルに引き上げられ、建築物の省エネ対策が本格化していきます。高気密・高断熱の省エネ住宅にするには相応のコストが掛かりますが、光熱費を抑えるだけでなく冬場の起こるヒートショックや結露によるカビの繁殖も防ぐことが期待でき、また、健康で快適な住環境と長持ちする住宅を生み出してくれることは間違いありません。国による減税措置や補助金の支援策、住宅ローンの優遇金利などを有効活用して、将来に向けた省エネ住宅を検討してみて下さい。

2023.05.23

ハウスメーカー、ビルダー、工務店の違い

ハウスメーカー、ビルダー、工務店、いずれも住宅を建築する業者の呼び名ですが、その違いについて分からないと言われる方は多いです。異なるタイプの建築業者であり、それぞれに特徴もありますので、その違いについて解説してみます。

ハウスメーカーは、住宅部材の製造及び設計・施工を行う企業体です。自社で営業、設計、施工の部隊を持ち、自社ブランディングから商品開発、大規模な住宅開発事業などもおこなう「総合住宅建設企業」です。自社ブランドを作り、全国に支店を持って数千棟から数万棟の建築をおこなうことができる大企業なのですが、特徴として、建築部材の工業化、分業専従制で効率を図り、独自工法で高品質と保障を訴求するところです。

次にビルダーですが、住宅建築を専門におこなう建築業者のことを指しており、中規模程度の地元企業が多いです。ビルダーの中には都道府県をまたいで事業エリアを広げたり、住宅ブランドのフランチャイズ店をしているところもあります。ハウスメーカー並みに組織化された大手ビルダーもありますが、特徴としては、施工は自社でおこないますが設計やデザインは外注することもあり、顧客の注文に応じて幅広く、臨機応変に対応することを強みとしているようです。

最後に工務店ですが、地元に根付いた小規模な建築業者がほとんどで、地域密着を信条として地道に事業を展開している企業が多いです。技術ある大工を抱え、伝統的な日本建築をする老舗の工務店もあれば、住宅メーカーや大手ビルダーの下請けをしている工務店もあります。個人の住宅を請け負っている工務店の多くは顧客からの紹介で受注をしていますが、これは技術に裏付けされた信用と信頼があるからであり、人間味ある住まいづくりをするのが工務店の特徴といえます。

同じ建築会社でも異なる特徴があるので単純に比較することは難しいですが、例えば、設計の自由性で見ると「 住宅メーカー < ビルダー <工務店 」、施工力では「 住宅メーカー > ビルダー > 工務店 」、一般的な個人住宅のコストを比較すれば、「 住宅メーカー > ビルダー > 工務店 」のように限られた視点で見ることはできます。

建築会社を選択する折には、施主が求めていることに対応している建築会社なのか、希望する条件に沿った建築会社なのかなどを吟味することが大事です。その為にも、建築事例を見せてもらい、詳しく話を聞いて、価値観や共通認識を確認するようにして下さい。

2023.04.20

太陽光パネルのリサイクルと処分

2011年の東日本大震災を境に再生可能エネルギーの需要が高まり、国は再生可能エネルギーの活用を促進するための「再生可能エネルギー特別措置法」や「固定価格買取制度」を制定しました。それにより、早く安価で設置できる太陽光発電システムが急激に普及することとなり、一般住宅への設置だけではなく、事業者による大規模な太陽光発電施設も作られ、現在では全発電量の2割を超えるレベルまでになっています。

再生可能エネルギー代表格でもある太陽光発電システムの普及は歓迎すべきことですが、急激な増加の過程でいくつかの課題を抱えることにもなりました。一つは太陽光パネル設置において環境破壊を起こしかねない事案が見受けられること、もう一つは太陽光パネルの寿命とともに膨大な量の産業廃棄物が生まれ、それをどのように処分していくかという問題です。

太陽光パネルの寿命は20年から30年程度と言われており、2040年頃には最終処分の処理能力を超える大量の太陽光パネルが破棄されることが見込まれています。太陽光パネルは主にシリコン、ガラス、アルミニュウム、銅などの材料で作られているのでリサイクルが可能である一方、鉛・セレン・カドミウムといった有害物質も含まれていますので産業廃棄物として適切に処分をしなければなりません。撤去する折には資格を持つ専門業者に依頼をし、撤去費・運搬費・処分費などの費用を負担する必要があります。

国は、太陽光パネルのリサイクル、リユース、処分を促進するための「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」を公表し、中間処理を行う事業者の技術開発の支援やリサイクルシステムの構築を推し進めています。今後、住宅に太陽光パネルを設置することが義務化されることが見込まれる中、循環型社会の実現には消費者も相応の負担と協力が必要であることを考えると、設置利用者は廃棄に必要な費用の積立などはしておくことが求められます。

 

2023.03.15

住宅ローン事前審査のタイミング

住宅取得時において住宅ローンを利用する場合、借入予定の金融機関に対し「住宅ローン事前審査」を受けておく必要があります。事前審査を受けておくことで建築予算の裏付けができ、安心して商談を進めていくことができるのです。事前審査は債務者となる施主自らが金融機関に足を選び受けるものですが、検討している建築会社の斡旋でおこなっているケースも多いようです。

事前審査は申込者の信用調査(与信)が主な目的です。申込者の属性、職業、収入、家族構成などの個人情報、過去・現在の債務の状況、支払い履歴などを調査し審査をおこなうのです。申込者が希望する借入額もしくは借入可能額の可否を審査してもらい、事前審査が通れば「事前審査決定通知書」が発行されます。これがあれば請負工事契約や売買契約を締結することができるのです。

では、住宅ローンの事前審査を受けるのはいつが良いのか?ですが、住まいづくりは予算を立てた上で進めることが望ましいので、住まいづくりの計画を始められた最初におこなうことをお勧めします。この場合、事前審査は建築する会社や購入する物件が決まっている訳ではありませんので、金融機関に借入可能額を算出してもらい、その借入額の審査を受けるという形で進めるのがいいでしょう。

また、自らが金融機関に出向き相談の上事前審査を受けることをお勧めしましたが、これは貸付ける側(銀行)と直接話ができるからです。貸付する側は無理な返済計画は勧めませんし住宅ローンの中身も詳しく説明してくれるからです。実際、建築会社の提携ローンやネット銀行など、対面の無い形での事前審査はオーバーローンの元になることが多く、また、十分な説明を受けないことで後々トラブルにもなることも多いです。

住宅ローンは低金利で長期に借りれることが最大のメリットです。ただし、借りたお金は長期に渡って支払っていかなければなりません。借りれる額ではなく支払い可能額を借りるということを心掛けて下さい。

2023.02.25

40代・50代の住宅ローン

今や人生100年時代と言われています。特に最近では、子育てを終えた40代・50代の夫婦が自分達らしい生活スタイルに移行したいと考えたり、晩婚化の中、40代・50代で新しい住まいが必要となったりする理由からか、40代・50代の新しい住まいづくりが増えてきているように感じます。

年齢を重ねるとともにライフスタイルと既存の住宅が合わなくなったり、住まいに対する考えや嗜好が変わったりしますので、新しい住まいを求めることはある意味必然と思います。40代・50代の新たな住宅取得は歓迎すべきことであり、国も国民の豊かさの実現や経済への影響を考えた時に促進すべきこととして考え支援していると思います。

さて、40代・50代からの住宅取得で問題となるのは資金です。年齢を考えると現金で購入するのがベストだと思いますが、超低金利時代の今日では住宅ローンを利用して取得することも可能であり利用を考える方も多いと思います。ただし、借入れたものは返済しなければなりませんので、世代的なリスク(病気等)を考慮した上でローンを組むことが必要です。

住宅ローンの完済年齢は金融機関によって異なりますが、住宅支援機構(フラット35)では80歳となっており40代半ばであれば長期(35年)でローンを組むことも可能です。また、万一の場合に備えた「団体信用生命保険」も50歳未満であれば制限無く多様な保険に加入することも可能となっています。

借入についてはどの世代であっても実現可能な返済計画を立てることが重要ですから、特に40代・50代では、働ける期間・健康状態なども十分考慮をした上で借入額を決めるべきです。予算に合わせた住まいを検討することが望ましく、ローンが組めるからと借入可能額に合わせて物件を手に入れるというのはお勧めできません。

何歳であっても新しい住まいや環境は生活に活力を与えてくれ、生き生きと過ごすせるモチベーションになります。住まいが変わればリフレッシュでき、新たな意欲も湧いてきます。それだけメリットがあるだけに、適切な予算で身の丈に合う、ライフスタイル合った住まいを手に入れることが大事だと思います。

 

2023.02.10

住宅の保証・点検・メンテナンス

住宅購入後の点検・メンテナンスなどは取り決めやルールがある訳ではありませんが、新築した建築会社が定めた時期に点検をし、不具合が想定される箇所もしくは不具合の起きた箇所のメンテナンスをおこなうことは、元々は工業化住宅(プレハブ)である大手住宅メーカーが制度化してきたものです。現在では工務店も積極的に取り入れており、エンドユーザーが建築会社を選択する折の一つの要素にもなっています。

点検・メンテナンスは、家の建て方や建物の種類、建築場所などによって異なるので、一律にこうするべきというものはありません。居住者自身が住まいを管理し、管理する中で住まいの変化を見つけ、都度対処するというのが本来の形だと思います。1980年代から工業化住宅(プレハブ)が急激に増えたこともあり、住宅も他の工業化製品(車や家電)と同様に保障・メンテンナンスは製造者責任(施工者)という考え方を強めたことで、定期点検をおこない、メンテナンス施し、保障をしていくという今の形になったのです。

住宅における保障については大きく3つで、①雨漏れや建物の傾き(不同沈下含む)、シロアリ被害など構造躯体に関しての保証(10年)、②住宅設備機器の不具合についての保証(2年)、③工事の仕上げ・施工ミスについての保証(2年)、これをベースに、一定の条件と追加の費用負担により保証期間の継続という形で運用されています。新築の住宅には10年間の「瑕疵保障」が法律で義務付けられていますので、①についてはどの建築会社も同じですが、中には20年、30年間保障しますという建築会社も出てきていますし、②や③についても、定めた保障期間後もお得な「メンテナンスセット」などを提案している建築会社が増えてきています。

昨今、保障・点検・メンテナンスは建築会社の一つのセールスポイントになっています。各社競い合うようにオリジナルの点検・メンテナンスプログラム、保障期間の長期化という傾向になっていますが、中には実現可能?と思われるものや、点検・メンテナンスで収益を上げていると思われるようなものも見受けられますので、条件が良いとか期間が長いとかだけで判断をせず、中身を良く聞き選択をする必要があると思います。

2023.01.20

住宅取得時の「持分割合」

住宅を取得した場合、住宅の所有割合である「持分」を決める必要があります。原則は出資割合で決めることになっていますので、取得費用の預金名義、借入金の債務者、住宅資金の生前贈与などを考慮して「持分割合」を決めます。これらを無視して「持分割合」を決めてしまうと、夫婦や親子であっても贈与税等の対象になりますので気を付ける必要があります。

例えば、預金名義も借入金の債務者も夫、住宅資金の生前贈与も夫の家系から受けたとなれば、原則、「持分」は全て夫となりますが、預金は婚姻後貯蓄したものならば相当額を妻の「持分」として入れることはできますし、妻も仕事を持ち一定の収入があるのであれば、借入金を連帯債務にすることで「持分」を入れることができます。生計をともにしている夫婦の場合は一定の条件が揃えば「持分」を割り振ることができるのです。尚、「住宅取得資金等の贈与の特例」を利用する場合は、贈与を受けた者の「持分」は必ず入れなければなりませんので気を付けるようにして下さい。

先に述べたように「持分割合」は出資割合で決めるのが原則ですが、夫婦の場合は力を合わせて財産形成をしていますので、それらを考慮した上で「持分割合」を決めることが望ましいでしょう。自分達で決めた「持分割合」に問題が無いか確認したい場合は、税務署や税理士等の専門家に尋ねると良いと思います。余談ですが、20年以上の婚姻関係のある配偶者に持ち家(土地)を贈与する場合は2,000万円まで非課税となる制度があります。新築時妻の「持分」を入れることができなかったとしても、長年連れ添った配偶者に対して非課税で贈与できる制度を活用することで、妻へ「持分」を贈与することができます。

2022.12.20

持病がある場合の住宅ローン借入

民間の住宅ローンを借入する場合、団体信用生命保険への加入は必須条件となっています。これは、ローン返済中に重度障害や死亡等によって返済が困難になった場合にローン残高を負担する保険であり、債務者の家族が経済的に困窮することにないようにと設けられている生命保険です。保険料はローンの金利として上乗せする形で支払い、債務者の希望によって8大疾病等の保険も付加することもできます。健康であるからこそ仕事を続けることができ、安定した収入を得ることもできる訳ですから、多額の債務を背負う折のリスクヘッジとして団体信用生命保険は必要なものです。

治癒が困難な病気や現在治療をしているような状況では団体信用生命保険には加入できず住宅ローンを組むことはできません。ただし、一般的な病気で治療の結果完治し、一定の歳月(3年)が経って入るようなケースでは加入することができます。例えば癌などの大きな病気にかかったことがある方でも団体信用生命保険に加入し住宅ローンを組んでいらっしゃいます。一生付き合うような持病をお持ちの場合は、病気の種類や治療の内容などを保険会社に告知し判断を仰ぐようになりますが、安定した治療により日常生活や仕事に支障がないのであれば、団体信用生命保険に加入できる場合も多いようです。取り扱う金融機関によって判断は異なるようですから、まずは申し込まれる金融機関に相談をしてみて下さい。

他方、金融機関によっては団体信用生命保険の加入を条件としていないところもあります。代表的なものが政策金融公庫の「フラット35」で、団体信用生命保険は任意加入となっており生命保険に入ることが融資の条件とはなっていません。持病によって民間の金融機関の団体信用生命保険には加入できないということならば、「フラット35」を利用することで住宅ローンを組むことは可能です。

住宅ローンは長期間返済をしていく債務です。後々返済が困難にならない返済計画となるよう、家族とも良く相談をした上で進めていくことが大切だと思います。

2022.12.01

建築会社のプレゼン比較

複数の建築会社を検討し見積りを出してもらうという方も少なくありません。一生に何度もない高価な買い物ですから、エンドユーザーの立場に立てば、ある意味当然なことだと思います。ただし、見積書の形式は建築会社によって異なり、専門用語で書かれた見積書の中身をエンドユーザーが判断するのは困難です。本来、「合い見積り」というのは、基本設計、仕様・設備が同じでなければなりませんが、住宅建築においてはそのような形式で出してもらうケースは少なく、各々の建築会社は施主へのヒアリングをもとに、設計図書、仕様・設備、見積書もしくは資金計画書を提案するという形になりますので、実際はこれら提案物を比較するという形になります。

設計に関しては施主の要望をもとに提案がなされますので、要望が盛り込まれているか、建築会社の特徴を生かした提案はどうなのかを比較して下さい。我が家の立場に立った設計をしてくれているか、プロとしての提案がなされているかがポイントです。仕様・設備に関しては建築会社の考えが色濃く出るもので、コストだけでなく、将来の使い勝手、メンテナンスや耐久性等も考慮して提案がなされます。仕様・設備は基本性能、外装・内装仕上材、設備機器と多岐に渡りますので、必ず仕様書を作成してもらい説明・確認することがポイントです。中には過剰な仕様・設備の提案になっていることもありますし、安さを追求する為に耐久性の低いものを提案されている場合もあります。十分チェックすることが必要です。

見積書については「明細書」を出す建築会社は少なく、多くは一式見積りの形式で出されますので比較することは困難です。したがって、同時に出される「資金計画書」を比較する方がよいと思います。「資金計画書」では、本体工事費だけでなく付帯工事費用や諸費用、支払い方法等も提示されますが、実はこれが建築会社で異なる部分であり、比較するべき点です。付帯工事費は予算計上なのか、見積りを取っているのか、もしくは実費計上なのか、諸費用(設計料や申請費など)は各々いくらなのか、支払い方法や資金計画などの提案はどうなのかを比較すると建築会社の姿勢というものが分かりますので、ここをチェックしてみて下さい。

最後になりますが、提案物の比較も重要ですが、建築会社の仕事ぶりを比較することも重要です。資料は分かりやすいか、説明は丁寧か、時間を守るか、担当者は誠実で一生懸命に取り組んでくれるかなど、長く付き合っていくパートナーとして相応しいかを自分目線で比較して下さい。満足する住まいづくりにかかせないポイントは実はここではないかと思います。

 

2022.11.16

自営業者の住宅ローン借入

一般的に自営業者は住宅ローンが借りにくいといわれています。理由は、返済能力を判断する収入が事業内容によって左右されることや、事業の継続性を問われたりするからです。実際、金融機関側の取り組みも給与取得者の方より慎重かつ消極的であるように感じますが、自営の方が借り入れできないという訳ではありません。不動産に担保力があり、生命保険にも加入することができる健康な方なら、定められた審査基準をクリアすることで住宅ローンを借りることができます。

金融機関が自営の方の住宅ローン貸付時にチェックする項目としては、①継続的な所得があるかどうか、②事業の借り入れなどが多額ではないか、③購入物件の担保力はどうか、④年齢や健康状態などがポイントになるといわれています。中でも①、②がもっともチェックをするところであり、それを判断する為に事業内容が分かる確定申告書等の提出が必要とされています。一般的な金融機関では直近3期連続で黒字であることが融資する条件とされており、直近3期分の確定申告書の提出を審査の条件としているようです。公的融資である住宅支援機構のフラット35や特定の金融機関の中には1期分の確定申告書の提出で審査をするところもありますが、申込者の所得の継続性、事業内容の確認という観点からすれば、3期分の確定申告書が必要であるというのは当然なように思います。

ご質問の自営をなさっている方が住宅ローンを組むには何年後からについては、少なくとも3期分の確定申告書を用意する必要があることから、最短でも自営を始めて4年後に住宅ローンの審査を受ける条件が整い、ローンの審査が承認されれば住宅ローンを組むことができるということになります。尚、住宅ローンの借入可能額は、返済負担率(所得に対する返済額の比率)や他の借入金等で融資額が変わりますので、確定申告の中身も重要になります。まずは事業を軌道に乗せ、安定的な収入が得られるようにすることが重要であり、その上で住まいづくりを計画していくということが大事だと思います。

2022.11.01

アフターコロナの住まいづくり

コロナウィルス感染症は、私たちが過ごしていた当たり前の日常を一変させました。人との関わり合いをなくしただけでなく、物の価値や考え方までも変えてしまったように感じます。ただ、これがずっと続いていくことは考えられず、アフターコロナという言葉に代表される「新しい生活スタイル」を模索しているのが今の状況です。

住まいづくりに関しても同様で、今まで当たり前であったやり方や考え方が否定されたことで、住まいに対する価値観、住まいの活用方法なども深く考えるようになりました。それに呼応するように売り手側からも新しい住まいづくりの提案がされるようになり、特に住まいづくりの進め方が大きく変わりました。今や、買い手側の都合や多様性に対応できる商談の形に移行しています。ウェブを使った打合せなどはその典型で、住まいを提供する業者側も商談方法を工夫し買い手が利用しやすいサービスやモノを提供するようになってきています。

新しい住まいづくりが浸透する一方、多様性の対応は物やサービスの価格を押し上げることに繋がります。加えて、コロナウィルス感染症の影響でサプライチェーンが崩壊し原材料費が高騰したことも影響して新築の注文住宅の価格は相当に高くなっています。今後、注文住宅の新築を検討できる方はある程度条件の揃った方に限定されてくると思います。一方、新築のコストを抑える建売分譲は今後も増加すると予想されますが、自由性・選択肢が無いため、中古住宅のリノベーションにニーズが高まるのではないかと言われています。「多様性と新しい生活スタイル」これがこれからの住まいづくりのポイントになってくると思います。

住まいづくりにおいて最も大切なのは、「住まいづくりを始めた動機」と「身の丈にあった住まい」です。住まいづくりを始めた動機に沿った形で話を進めていくこと、自分自身の身の丈にあった住まいを選択していくこと、これがポイントです。それを実現するには、しっかり情報収集をして、客観的な意見を聞いて、自らの考えを尊重してくれる建築会社を選択することです。

2022.10.16

住宅ローンの今後の見通し

住宅ローンの金利は政府・日銀による大規模な金融緩和政策により低く抑えられています。皆さんもよくご存じの政府系住宅ローン「フラット35」の金利を見てみると良く分かりますが、2004年ごろには3%台であった金利は2015年くらいには1%台にまで下がり、そこから7年余り、現在もこの超低金利は続いています。これは、安倍首相による「アベノミクス」政策に起因しています。

ただし、世の中の状況は大きく変わってきました。2年半前に突如発生した「コロナウィルス感染症」、今年初めに起きた「ウクライナ・ロシア戦争」が、グローバルスタンダードを破壊したことで、原材料価格が上がりはじめ、市場に物が不足するようになり、インフレーションが世界各地で起こり始めています。コストプッシュ型のインフレは悪いインフレと言われますが、各国は急激な物価高を抑えるべく政策金利を一斉に上げ始めています。これにより住宅ローンなどの金利も上昇しています。

我が国は先進国の中で唯一、金融緩和政策を今も継続していますが、金利上昇の圧力は強まっており住宅ローンの金利も少しずつ上がり始めています。先ほどご紹介した「フラット35」の場合、2月から7ヶ月連続で金利は上昇しており上がり基調なのは明白です。政府・日銀は、デフレ脱却・2%程度の緩やかなインフレを目指し現在の金融緩和政策を続けていくと発表していますが、世界の中で日本だけが金融緩和政策を続けることで通貨下落(円安)などの問題も引き起こしていますから、いつまでこれが続けれるのか疑問視されています。

金融緩和政策の旗振り役である日銀黒田総裁の任期が来年春までとなっていることから、ここが政策転換の分岐点になるのではないかと予想する旨もありますが、どうなるかは誰にも分かりません。しかし、我が国もインフレが今以上に大きくなってくれば政策金利を上げざるを得なくなり、結果、住宅ローンの金利は上昇するということは予測できます。また、その可能性は高いと推測されます。

現在はまだ金融緩和政策は継続されており、超低金利での住宅ローンも活用できる状況です。低金利の住宅ローンが利用できることは住まいづくりにおいて大きなメリットですから、ここ2~3年にマイホーム取得したいとお考えであるのなら計画を前倒しする価値は十分にあります。民間の金融機関の場合、事前審査を受けた時点の金利を適用してくれるとこもありますから、タイミングを見て事前審査を受け、住まいづくりの計画を具体的に立ててみるというのも一つの方法だと思います。

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